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「初期臨床研修は大学病院と市中病院、どちらでするのがいいのか」
働き始めた研修医やマッチングに臨む医学生の間では特に、頻繁に議論になっていることではないだろうか。
今回は、大学病院での初期臨床研修を中断した私が再開先病院を選ぶ際に「大学病院ではなく市中病院に行きたいと思った理由」について記事にした。
経緯
医学生の頃の私は、「人が多い方が楽しそう」「アカデミックに勉強できる方がいい」「市中病院は忙しそうだけど大学病院は楽そう」そんな理由で初期臨床研修先を大学病院に選んだ。しかし結局、半年で大学病院での臨床研修を中断し他の病院で再開することになった。
臨床研修再開先をどこにしようか考えたとき、「もう大学病院はやめよう…」そう思った。実際に大学病院で働いてわかったことがあったからだ。
勿論大学病院と市中病院のどちらがいいかなんて断言できない(病院によっても様々だろう)し、人によって感じ方は違う。この記事では「大学病院で臨床研修を中断し、市中病院で臨床研修再開し始めた私が感じたこと」を書いていく。
理由
大学病院より市中病院の方がいいのではないかと私が思う理由は以下の3つだ。
①雑用が多い
よく聞く話では、市中病院よりも大学病院の方が断然雑用が多い。
救急ローテなどでは手技を沢山やらせてもらえることもあるが、内科をローテしているときの大学病院の研修医の仕事と言えば専らカルテ記載、検査オーダー、採血。
カルテ記載やオーダーは医師の業務だとして、採血に関しては1年目の研修医よりベテランの看護師の方が上手いに決まっている。
それでも私の病院では、採血は主に研修医の仕事だった。採血を沢山やらせてもらえて練習になっていいじゃないかと言われればその通りだが、患者数が膨大であるにもかかわらず研修医が自分だけ、なんて場合は本当に大変だ。
CT室など各検査室に患者を連れていくだけの業務(本来は看護師やヘルパーが行う)をしていたこともある。
その点市中病院では、採血や検査室への患者案内などの雑用を研修医がやることはほとんどないというのだ(看護師の仕事内容や働きぶりがまるで違うとでも言うべきだろうか、市中病院で雑用をしようとすると看護師が「先生は医者なんだからそんなことしなくていいよ」と言ってくれる)。しかし望めばいくらでもやらせてもらえる市中病院も多いようだから、採血の練習に困るということもないだろう。
「大学病院の研修医が雑用ばかりしている間に、市中病院の研修医は自分で考え実践する訓練を綿密に行い成長している」
これが本当かどうかは病院次第というよりその研修医次第だと思うが、大学病院で働いていた頃周りの研修医たちはこんな不安を抱えている人が少なくなかった。
実際に後期研修医を見ていて、大学病院と市中病院で初期臨床研修後に明らかな差がついているなあ、と思うこともあった。
②人間関係疲れ
大学病院はとにかく人が多い。医師だけでなく他の医療従事者も、そして勿論患者も多い。
大学病院の研修医募集人数は、1学年につき40~50人のところが多いだろう。それだけ研修医がいれば、同期や研修医の先輩(もしくは後輩)といざこざを起こすことだってある。実際に仲が悪くなってしまった人たちは沢山いた。
上級医や他の医療従事者や患者とトラブルになることだっていくらでもある。人間が多いと、トラブルが起きる確率はぐんと上がると思う。相手からしたら何気ない一言でも、立ち直れないくらい落ち込んでしまいそれが臨床研修中断につながることだってある。
③給料
市中病院の給料は場所によって様々(30~60万ほどだろうか)だと思うが、大学病院は大体どこも同じくらいの給料(20~25万のところが多い印象)だ。大学病院の方が給料は安い。
働き始める前の私は、一人暮らしをしたことがなかったし自分にどのくらいのお金がかかるのか考えたこともなかった。まあぎりぎりやっていけるくらいだろう、そう思っていた。
しかし実際に大学病院の給料で生活しようと思うと結構きつい。社会人になっても実家などから仕送りをもらえるという人は別だが、そうでもない限り大学病院の給料だけで生活するとなると質素な暮らしをせざるを得ない。
それから給料は仕事のやる気にそんなに影響しないと思っていたが、これも実際は違った。
同じ当直1回でも、それが5000円か1万5000円かでモチベーションはまるで違う。
気にならない人は
というわけで私は臨床研修再開病院をどこにしようか考える際、端から大学病院や研修医募集人数の多い市中病院(人が多いと疲れると思ったので)の選択肢は消してしまった。研修医募集人数の少ない病院はそもそも臨床研修中断者受け入れ枠が小さい故に、受け入れ病院探しには苦労した。
もし初期臨床研修を中断し(もしくは中断予定で)、再開病院をどこにしようか悩んでおり上記のようなことが気にならない方は、大学病院など研修医募集人数の多い病院にも聞いてみてもよいと思う。そういう病院の方が、きっと臨床研修再開受け入れについては寛容だろう。
この記事を書いたのは
医師。医師国家試験112回不合格、113回合格。医療エンタメトップライター、編集もこなしエンジニアとしても活躍。国試合格後、喜び勇んで初期臨床研修を始めるも半年で研修中断。そんな中折れ研修医がこれからどう生きていくのか臨場感をもってお届けする。臨床研修医を中断するにはどうすればよいのか、そして再開するにはどうすればよいのかを伝える。