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(エッセイその2)臨床研修中断までの道――職場に休みたいと言ってみた

目次

今まで公開したエッセイ:

初期臨床研修を中断するという選択(エッセイその1)

精神科受診

9月末──

7月半ばから仕事がつらくなって、次第に通勤中や勤務中にまで涙が出るようになり同期から「精神科を受診しろ」と言われた私は、どきどきしながら家から近いクリニックを探して翌日早速行った。

医師に経緯を話していたら涙が出てきた。仕事を思い出してというより「ああ、私よくここに来れたな、どうしようもなくなる前に誰かに頼れてよかった」という涙だった。

 

今までの自分だったら意地でも精神科には行かなかったかもしれない。

精神科を受診する、それだけのことが私にとって凄く勇気の要ることだったのだ。

そして医師の診断はかなり鬱病に近い適応障害

 

すぐにでも診断書を書きますから休んでくださいと言われた。

でもこの時点では私はまだ病院に何も言っていなかった。

「まず職場に話してもいいですか」
「そうですね、それを先にしましょう。診断書は書くとその場で効力を発揮しますから。

※診断書は書いた時点で効力を持つ、つまり休職日はそこからスタートになる。

休職に際する診断書というのは期限が1ヶ月であることが多いから実際に休職するその日に診断書を取得するのが最も無駄がない。

職場に相談

その時はいきなり臨床研修中断とまでは考えていなかったから、とにかくこういう診断が出て、休みたいと思っている旨すぐに研修センターにメールをした。

翌日、研修センター長(医師)研修センターアドバイザー(医師二人)事務員とで面談をした。

 

少しは楽になれるだろうか──

そんな希望を抱えた私は、臨床研修の今後(中断するか否かも含めて)についてはまだちゃんと決めていないがとにかく休みたい、
そして今出ている当直のシフトに関しては良いが、まだ出ていない来月のシフトに自分を組まないで欲しい」と頼んだのだ。

 

研修センターの医師たちからの返事は
当直のシフトは心配いらないですよ、あなた以外の研修医で回せるようにしておきます
臨床研修中断とか休職とかっていうのは重い決断ですから慎重にね、でも見た感じ大丈夫そうだしもう少し頑張ってみましょう
そうそう、近くのクリニックに行ったみたいだけどうちの産業医の先生とも話してね

 

「はあ…」

ん…?適応障害の診断は出ていると伝えたはずだが…。「見た感じ」…?

見かけで判断をするなよ!!

と思ったが、とりあえずその日は病院の産業医と話をした。

産業医面談

産業医がいる診察室へ案内されて向かうと、声が大きく横柄なその医師はまず最初に「なんかもう医者を辞めたくなっちゃったんだって!?と言ってきた。

研修センターから何を聞いたかしらないが、私はそんなこと一言も言っていない。

確かに今後のことに関して聞かれた時、

ちょっと休職もしくは臨床研修中断して仕事に戻るのか、そして戻る時にはこのままここで続けるか他の病院で続けるのか決めていないし、最悪そのまま医師を辞めるかもしれない

でもそんなことはまだ考えられる状況ではないしとにかく一旦休みたいとは言った。

いち可能性として医師を辞めるかもしれないとは言ったが、何故それをメインでいきなり話すのだろう…。

不信感

面談で私の伝えたいことは何も伝わらなかったんだろうか…。
そういえば表面上だけ心配して親身になってるふりをして何も身のある話はなかったなあ…。

この辺りから病院の臨床研修センターの事務医師たち不信感を覚え始めた。

しかも先述の当直のシフトの話は全く反映されておらず、実際に私が休職した際に代わりの当直者を探すのにあたふたしていた(私は事前に言っていたので知らん振りをしており、あたふたしていたのは研修センターだが)

正直この頃にはもう、前に述べた仕事が辛くなった理由

尊敬できる医師があまりいない
カルテやカンファレンスの原稿作成など文章を作ることが苦痛
指導医不足
そもそも病院という環境が無理(?)
詳しくは前回の記事「初期臨床研修を中断するという選択」

のことなんてほとんど忘れていた。

 

そんなことより⑤事務や研修センターの医師達の対応が酷かったことを目の当たりにして、

こんな病院、こんな研修センター一刻も早く出ていかなきゃ行けない!と思った。

──気づいたらそれが原動力になっていた。

 

休職

もう少し頑張れと言われた私は、その言葉の通り臨床研修を中断することも休職することもなく1か月仕事を続けた。
志望科での研修だったので楽しい1か月になるはずだったが、私の心が晴れるわけがなかった。
そして10月末、やっぱり限界だと研修センターにメールをした。

 

また面談。

90日以内休職制度(必修診療科研修期間さえ満たしていれば、90日以内であれば二年の臨床研修期間を延長することなく休職が認められる制度)を使って休むなり臨床研修を中断なりするのはいいけど、

今後どうするのか決めてからの方があなたにとっていいんじゃないの?

 

…まあ、確かに。

自宅近くのクリニックの精神科医からは重大な決断はまだしないように言われていたが、病院に対して不信感が募っていた私の頭の中からは「休職なり臨床研修中断なりした後にこの病院に戻ってくる」という選択肢は消えていた。

となると、さっさとここでの臨床研修を中断して他の病院で臨床研修を再開するなり医師をやめるなりするほうがいい。

とにかくここから出たい。

 

「・・・まずは休みたいです。90日以内の休職制度、ありますよね?その休暇中に色々考えていいですか。今後に関してはおそらく臨床研修中断すると思います。少なくともここには戻ってこないです

 

「じゃあ、まずは1か月休職して臨床研修再開先病院が決まったら連絡してください」

受け入れ病院

臨床研修を中断したとして、どの病院で臨床研修再開するのかは何も決まっていなかった。

どこが受け入れをしているのかも知らないし。

 

研修センター長に聞いてみると、「ああ、事務に一覧があると思うからそこから探して」

事務に聞いてみると「そんな一覧はありません」

 

・・・。

結局自分で探さなければならなかった。

ネット上で臨床研修中断後の再開受け入れ病院を探しても病院自らホームページで「受け入れしますよ」と言っているところはほんのわずかだった岐阜とか大阪とか、私の住むところからは遠い病院ばかりだった。

私は東京でずっと暮らしてきたし研修はできれば東京、もしくは神奈川、埼玉、千葉あたりを考えていたので頭を抱えた。

それでも諦めずにいろいろ調べているうちに、医師国家試験予備校MECさんが、臨床研修中断後の再開受け入れ病院に関していくつか候補をくれるということを知り電話をした。

 

この記事を書いたのは

中尾れたす

 

医師、112回不合格、113回合格。医療エンタメトップライター、編集もこなしエンジニアとしても活躍。国試合格後、喜び勇んで初期臨床研修を始めるも半年で研修中断。そんな中折れ研修医がこれからどう生きていくのか臨場感をもってお届けする。臨床研修医を中断するにはどうすればよいのか、そして再開するにはどうすればよいのかを伝える。

中尾れたすの記事はこちら

@gropout

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