医学部生の中には、勉強が行き詰まり、留年に焦りを覚えている人もいるのではないでしょうか。この記事では、どうすれば医学部で留年せずに済むのかについて解説しています。ストレート卒業率のデータや、留年してしまう理由などについても触れているので、留年を避けるための参考にしてください。
医学部の留年の仕組み
医師になるためには、医師国家試験以前に、大学の卒業試験に合格する必要があります。卒業試験に不合格になると、医学部を留年することになります。
試験内容は大学によって異なるものの、基本的に難易度は高く、不合格になる学生も少なくありません。国試と異なり、大学ごとに卒業試験向きの参考書や勉強法が決まっていないため、対策は難しい傾向です。
また、ほかの学部と同じように、必修科目の単位や卒業必須単位を落とした場合にも留年となってしまいます。授業の出席数、履修科目の試験、提出課題などをクリアしなければ、進級ならびに卒業はできません。
医学部のストレート卒業率は?
留年せずにストレートで卒業できる学生は、いったいどのくらいいるのでしょうか。文部科学省が2022年に発表したデータを参照すると医学部のストレート卒業率がわかります。2016年度に各大学へ入学した医学生の「最低修業年限での卒業率」は、国公・私立の全大学を合わせた平均が84.4%です。
また、大学ごとにストレート卒業率は大きく差があります。高い大学では95%前後ある一方で、70%未満と多数の学生が留年している大学も存在します。在籍する大学次第では、留年せずに卒業することは簡単ではないことがわかります。
なお、国公・私立大学で比較すると私立の方が留年率はわずかに高い傾向にあります。両者の差は2.3ポイントとなっており、大学ごとにみられるほどの大きな差はありません。
【参照元】文部科学省|各大学の医学部医学科の入学状況及び国家試験結果等(8、9頁)
医学部で留年が多い理由
では、どうして医学部には留年する学生が多いのでしょうか。主な理由を4つピックアップし、詳細について触れていきます。
進級条件が厳しい
医大や医学部は、ほかの大学や学部に比べて進級条件が難しいことが挙げられます。ほかの学部では「2年次終了までに教養科目を一定以上の単位を取得する」「卒業までに専門科目の単位を一定以上取得する」といった内容がほとんどです。
しかし、医学部の場合は、「1年次終了までに必修科目をひとつでも落としたら留年」という厳しい条件が多く見られます。ちなみに、国公立大学よりも私立大学の方が、条件が厳しい傾向にあります。
医師国家試験合格の割合を維持したい大学側の考えとしては、現時点で国家試験に合格する見込みが少ない学生をあえて留年させる、という思惑も込められているようです。
専門科目が難しい
医学部の専門科目は内容が難しく、どれだけ頑張っても勉強についていけない学生が多発してしまいます。難易度の高さに加えて、科目数や1科目ごとの情報量も多いため、ほかの学部と比べて必要な勉強時間は多い傾向です。
また、座学だけではなく、学年が上がるにつれて臨床実習などの実技にかかわる内容も範囲となります。このようなテストや課題で良い成績が取れず、残念ながら留年となってしまう学生は少なくありません。
勉強方法がわかってない
医学部で留年してしまう人の特徴としては、「効率よく勉強する方法がわかっていないこと」が挙げられます。
科目ごとに勉強範囲や、教員の出題傾向は違うため、その科目に適した勉強方法を考えなければなりません。包括的に出題範囲をすべて学ぶだけでなく、試験に必要な内容を吟味して暗記することも大切です。
試験で必要な情報を集めるには、友人や先輩から共有してもらうのがよいでしょう。交友関係を活用して、試験の情報や過去問データを手に入れられれば、効率的な試験対策ができます。もちろん教授に積極的に質問することも必要です。自分ひとりの力で勉強を進めようとしない意識変革が求められます。
モチベーションが落ちている
医学部に入学した直後から、学業へのモチベーションが落ちてしまうことも大きな原因のひとつです。医学部は基本的に大学入試の難易度も非常に高く、合格した時点で燃え尽き症候群に陥ってしまうことは少なくありません。
これまでの受験対策と大学の授業では勉強の内容や質も変わるため、変化を受け入れるのに時間がかかり、やる気を損なうことがあります。
また、入学時には引っ越しや人間関係の一新など、生活環境も大きく変わります。新たにやるべきことが多すぎて鬱になったり、部活やサークル、アルバイトに熱中しすぎた結果、勉強への熱意が消えてしまうこともあります。
また、そのような状況にあることに対し、危機感が低いままであることも問題です。入学時にあったような、医学への興味や医師になる動機を忘れたままでは、やる気を再燃させることは難しいでしょう。
「きっとなんとかなるだろう」という甘い考えは早めに捨て、少なくとも周りの学生と同じペースで勉強に取り組むよう心掛けてください。
【留年した学生へ】MediE医師講師 凛子 先生のワンポイントアドバイス
留年した学生にとって、親に話しにくい、学費の支払いが難しい、友人と離れることで新しい学年でうまくやれるかなど、不安は尽きないでしょう。私も経験者なので、よくわかります。
ただ、そういった時こそひとりで抱え込むのではなく、先輩や塾の先生などに相談しましょう。他人に不安を伝えることで気持ちが落ち着いたり、アドバイスをもらえたりします。
医学部で留年しないためのポイント・試験対策
医学部で留年しないためには、いったいどのようなポイントに気をつけなければならないのでしょうか。具体的な試験対策の内容にも触れていきます。
冬の再試験対策については、こちらの記事も参考にしてください。
勉強方法を知る
自分に合った勉強方法を見つけることが、医学部の勉強には必要です。教科書の内容だけを頼りに勉強するのではなく、試験で良い点を取って、留年する確率を下げるための勉強方法をマスターしなければなりません。範囲をすべて暗記することはあきらめ、優先順位をつけて効率よく勉強することに慣れていきましょう。
なお、自分に合った勉強方法を探すもっとも手っ取り早い方法は、先輩や同級生に勉強方法を質問することです。その中から自分にできそうな方法を見定めてください。
勉強時間を確保する
勉強時間を多めに確保しておき、余裕のあるスケジュールで試験対策を進められるようにしましょう。部活・サークル、アルバイトに熱中することは、もちろん悪いことではありません。
しかし、勉強に支障をきたすレベルまで活動することは避けましょう。膨大な出題範囲や科目数をひとつもこぼさずに勉強できるように、綿密なスケジュールを立てて取り組んでください。
自己管理が苦手な人は、サークルやアルバイトなどにかける時間の上限をあらかじめ決めておくといいでしょう。気付いたときには時間がなかった、といった事態を避けられます。
情報を集める
医学部で留年を回避するためには、ただやみくもに教科書の内容をなぞるのではなく、重要な情報を集めて要領よく勉強しなければなりません。以下の3つの情報を積極的に集めましょう。
授業中に先生が大事だと言及した部分
真面目に授業に出席し、教員の発言をきちんとノートや教科書にメモしましょう。欠席した授業でも、授業の要点を共有して教えあえる友人がいるとお互いに役立ちます。
試験の過去問データ
3~5年分はあると安心できます。出題内容についての解説や模範解答も手に入れられるとよりよいでしょう。
留年のしやすさ
過去問とともに、授業ごとの合格基準や実際の合格率についての情報も重要です。事前にそれらの情報を知る術がなければ、難易度の高い科目では勉強量を増やすといった対応ができません。
過去問は、先輩から代々が譲り渡されるケースが多く見られます。前もって相談しておきましょう。自身で入手できなかった情報を同級生が受け取っている場合があるため、友人同士のパイプを頼ることも大切です。
過去問を徹底的に解く
過去問を手に入れたら、あとは徹底的に問題を解いてください。たとえ数年に及ぶデータを手に入れたとしても、自身で理解していなければ意味がありません。
また、本試験・再試験で違う過去問を手に入れたとしても、両方を解いて傾向の把握に努めましょう。過去問の内容を教員の発言や授業内容に照らしあわせて分析し、出題を予測してください。
また、各問題の内容を理解するだけではなく、試験の全体像を読み取ることも忘れてはいけません。本番では配点なども考慮しながら、重要な部分に時間をかけて回答し、残りの時間で自信がない部分を見直す方法がおすすめです。
MediE医師講師 凛子 先生のワンポイントアドバイス
私は勉強方法がわからないことと勉強量が足りないことが原因で留年してしまいました。留年を避けるためには、どのような勉強が必要なのか、どのくらい勉強すればいいのか、先輩や同級生に聞くことが大切です。
もし勉強の進め方で不安があるなら、個別指導塾のMediEをはじめ、塾の利用を検討するのもよいでしょう。留年が決まってしまう前に、今できることをやってみることが大切です。
まとめ
医学部に入学できる実力があっても、進級条件の厳しさや専門科目の難しさから、留年することは珍しくありません。
ストレートで卒業するためには、自分によく合った効率の良い勉強方法を知ること、勉強時間を多めに確保すること、先輩や同級生から情報を集めることなどが重要です。気付いた時点で手遅れにならないように、事前にしっかり準備や対策をしておきましょう。
もしも万全の対策をとっておきたいなら、個別指導塾・MediEの利用がおすすめです。生徒の特性に合った留年予防サポートを行っているため、医学部での勉強に限界を感じている人はぜひご活用ください。現役医師講師が、生徒の「個」に寄り添って指導していきます。詳しい情報が知りたい人は、気軽にお問い合わせください。