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医学部の解剖実習は何年生から? 実習内容や期間など基礎を解説

目次

大変なことの多い医学部の授業ですが、その中でも最初の関門と言えるのが人体の解剖実習です。その予習や覚悟をするためにも、解剖実習では何を学ぶのか、いつ頃行われるのか気になる学生は多いことでしょう。そこで本記事では解剖実習の基本的な内容スケジュール試験内容などについて解説します。

医学部で行われる実習の種類をおさらい

本記事のテーマは解剖実習ですが、医学部の学生はこれ以外にも多くの実習を経験することになります。そこでまずは補足情報として、学生が体験する主な実習の種類を確認してみましょう。

解剖実習

解剖実習は人間のご遺体(ご献体)を学生自身が解剖する授業です。解剖実習は基礎医学である解剖学の学習内容に含まれており、医学部の学生の必修科目となっています。この授業の目的は実物を使って人体の構造を深く理解することです。また、実習を通して器具の扱いや手術技術などについても学べるでしょう。さらに、ご献体と向き合うことを通して、人間の死や医師の責任などについて改めて考え、将来医療に携わる人間としての倫理観を育むこともこの実習の大事な意味です。

MediE医師講師 凛子 先生の実体験エピソード

解剖実習は、2年生ごろから始まります。最初から人体解剖に入る大学もありますが、私の時はその前にラットの解剖がありました。実際のご遺体を見ることになるので、最初はショックを受けたりと、慣れるまでに時間がかかる人もいました。他にも、ホルマリンアレルギーを持っている人は体調に影響が出てしまうので、さらに大変そうな印象を受けました。

早期体験実習

早期体験実習は1~2年次に行われる実習です。大学によっては入学して間もない時期に行われることもあります。この実習において学生は病院を訪れ、医師の業務や患者との関わり方などについて実際の医療現場の様子を学びます。診療などの実践的なスキルというより、医師としてのあり方を学び、医師になるための動機付けを得ることが目的の実習です。

見学型臨床実習

見学型臨床実習は、外来や手術、病棟などの臨床現場を見学する実習です。この実習形態において、学生はあくまでも見学に徹し、患者の診察や治療に直接関与することはありません。診察や治療の仕方、患者やその他の医療スタッフの接し方などを見て学ぶのが目的です。早期体験学習がこれに該当する場合もあります。

参加型臨床実習

参加型臨床実習は、学生が医療チームの一員として実際の臨床に参加するタイプの実習です。患者さんの同意を得たうえで医師の指導の下に行うのが前提ですが、診察や検査、治療方針の検討なども学生が自ら体験して学べます。これまで臨床実習といえば「見学型」が主流でしたが、近年ではこの「参加型」の実施形態が多くなっています。臨床の場に直接携わることによって、教科書や見学だけでは得られない、実践的な臨床経験を得ることが目的です。参加型臨床実習は5~6年次(大学によっては4年次の後半から)に実施されます。

医学部の解剖実習は何年生から? 実習期間はどれくらい?

解剖実習は、座学で解剖学について学んだ後、1~2年次に実施されることが多くなっています。そもそも解剖学や解剖実習は、基礎医学の学習内容のひとつであり、人体の構造や機能について理解を深めるための科目です。臨床について学ぶ際にもこうした知識は大前提となるため、比較的早い段階から学ぶ必要があると考えられています。実習に際してはご献体の全身を頭から爪先まで詳細に調べていくため、実施期間は3~7ヶ月と中長期に渡ることが多いです。

解剖実習の主なスケジュール

解剖実習の主な手順やスケジュールは以下の通りです。

1.解剖前

実習はご献体へ黙祷をするところから始まります。ご献体は医学の発展や教育のためにご厚意で提供された方のご遺体です。解剖に当たる学生は故人やご遺族への感謝を忘れてはなりません。

2.解剖

黙祷が終了したら、解剖の開始です。学生は複数人でグループを作り、頭部や胸腹部などのセクションごとに解剖を進めていきます。解剖を行う際は、メスやペアン鉗子などを使って表皮を切開し、脂肪などを取り除いて、臓器や血管、神経などの内部構造が視認できるようにします。そして、リストや教科書などと照らしながら各部位を同定していきます。

人体の構造は教科書や3Dモデルなどでも学習できますが、そこに示されているのは基本的にモデル化された人体です。しかし実習で使用されるご献体には当然ながら、筋肉や脂肪の付き方、骨格の形状、生前の怪我や疾患の痕跡など、さまざまな個体差があります。座学で得た知識とご献体の相違なども意識しながら解剖を進めるとよいでしょう。

解剖実習は非常にハードな内容で、実習当日は昼休みを除いて、朝から夕方までずっと解剖に専念します。精神的な負担ももちろんですが、目や手先を酷使しながらの立ち作業になるため、肉体的にも負担が多いです。これを無事に乗り切るためには、実習中はもちろん実習後のケアも含めて他の学生と協力し合うことが重要です。

3.解剖後

解剖が終わると、解剖室を清掃し、ご献体を棺に納めてから再度黙祷を行います。ご献体は後日火葬され、その後にはご遺族や教員と共に学生も参列して遺骨返還式を執り行います。一般に解剖実習のご献体は防腐処理だけでも3~6ヶ月要し、その後、保管と3~7ヶ月の解剖実習を経て最終的にご遺族へ遺骨が返還されるまで約2年もかかるとされています。遺骨返還式に参列することは、故人やご遺族の献身に対して当然示すべき感謝と敬意、責任であると心得ましょう。

解剖実習の試験内容や勉強のポイント

すべての解剖実習が終わると試験が実施されます。解剖実習の試験は難易度が高く、進級できない人も出てくる試験です。ポイントを押さえて対策しておきましょう。

解剖実習における試験内容

大学によっても異なりますが、解剖実習後に行われる試験は筆記試験と口頭試問の2つの形式で行われます。

筆記試験は、人体の各器官や組織の名称、役割、形状、位置、関係などが主な出題内容です。また、実習で使用したご献体の特定の部位に目印を付けてそれについて学生に答えさせる「フラッグ型試問」という方法で試験を行う大学も存在します。

口頭試問については、解剖したご献体に関する質問が主になります。口頭試問は、実習中のグループごとに受験を実施する大学が多いようです。個別のご献体について問う都合上、質問内容は一律になりにくく、教員ごとの違いも大きいとされています。

解剖実習の試験に合格するための勉強ポイント

まず欠かせないのが、解剖実習が始まるまでに教科書や参考書の内容をしっかり予習しておくことです。これは試験のためだけでなく、実習をスムーズに進めるためにも必ず行いましょう。解剖学では暗記すべき専門用語も非常に多いため、時間をかけた学習が必要です。各器官や組織の特徴を理解するためには、自分で該当部位のイラストを描いてみるのが効果的とされています。

また、共同で実習を行うグループメンバーとの協力も大切です。実習中はご献体の片側ごとにメンバーが分かれて作業を行う場面が多くなります。そのため、メンバー間で情報の引き継ぎや共有をしっかり行わなければ、自分の担当外の部分のことを見落としやすくなってしまいます。ときには他のグループのご献体も参考に見せてもらうのもよいでしょう。

これらに加え、過去問を解いたり、同じ大学の先輩に過去の出題傾向などを尋ねてみたりするのもおすすめです。

MediE医師講師 凛子 先生のワンポイントアドバイス

なによりも予習が大事です。事前にスケジュールが共有されるので、それを元にしっかりと授業内容を予習しておかないと、実習でも試験でも大変な思いをします。試験は実習の内容から出題されるので、試験を見据えたうえで実習に取り組むことが大切です。

 

まとめ

医学部における人体の解剖実習は主に1~2年次の時期に行われます。解剖実習は肉体的にも精神的にもハードな授業なので、試験に備える意味でも早めに予習をして備えておくのが大切です。MediEでは医師講師が一人一人の生徒に合わせた最適なカリキュラムで国家試験合格に向けて親身にサポートします。解剖実習も含め、もし勉強に関して悩みや不安があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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